みそのかんずめ

堕落しきった御時勢の話題をドォンドォン言おうじゃねえか!(ふつうのブログです)

【東方小説】恋する人魚姫 第3話「提案と要求」

人というのは感情がある、いや生物そのものというべきか。
感情は即ち生物全てに備わっているそのもの...その中でも恋とはその感情の一つだ。しかし恋は同族同士...つまり同じ生物との恋以外は許されない。そんな決まりを誰かは言っていた。

___では、妖は人との恋などするのだろうか____?できれば否と問いたい。妖とは人間達を跳梁跋扈する存在であり人間にとっては有害な存在だ。しかし妖にとってはそれが至福であり、それが人間とのコミュニケーションだと思っている。しかしどっちも不満になってしまうとお互いに接することもできず、同族同士ではない妖と人間とでは互いを理解し尊重することも出来ない。ただ、亀裂を生むだけ______

 
「.........」
目を覚ますとまず天井の壁を見た。そして起き上がりながら大きな欠伸を部屋に撒き散らしながら私を両手を上に上げた。
「ふぁ〜〜〜〜〜〜っ...」
まだ眠気が落ちずまだ眠かったが家の中はとても快適な場所であった。
そのまま男性に担がれていたこの私、わかさぎ姫は疲れのせいか寝ていたようだ。暫く寝ていたせいなのか喉がやけに乾いた。近くで蝉が鳴ってるように聞こえる。
「気がついたかい?」声なる方へ振り向く。振り向いた先には男がいた。
「ははは...あんなところで倒れて...日射病か熱射病にでもなっていたんかい?」
そんな訳ではない。私は日光には弱いだけだ。元人魚のせいもあるかもしれない。日差しに当たるだけで眩暈がする。日射病に近いかと問われるとそんな感じだ。
「ま、まぁ...そんな感じだと思ってください」私は愛想笑いのような笑みで男に返した。
「まぁそんな事はどーでもええ!」男は突然話を切り替えた。「お前さん、他所のモンだろ?お前さんみてーな人はここ辺りじゃそうそう見ねえ艶と顔してっからよ」
私は無意識に肌を触った。褒められた気がしたからだ。私の周辺には影狼ちゃん以外に褒めてくれる相手がいなかったからだ。私は自身のひ弱な性格のせいで友達が少なかった。特に陽狼ちゃんはいつも根暗な私をいつも励ましてくれた。そして気がつくと仲良くなっていた。何が何でも彼女との縁を切らない、そんな尊い存在だ。
そんな事をふと思いつつも、男は気がつくと外出しようと支度をしていたところであった。
私にも何か出来るをしなきゃ...そう決断し、私は彼の元へ向かった。
「だ、大丈夫かお前!」彼は驚愕し心配した。けど私は安堵の笑みを見せた。彼に心配はなるべくかけたくはなかった。
「私は...こんなところで立ち止まってる訳にはいかないの...夢の中で出会った人に、会いに行きたいが為に...此処に来たんだから!」
「...お嬢さん」男は深刻そうな表情を浮かべながらわかさぎ姫を見つめた。そして男はしばらく考え込み、閃いたかのような表情になった。男は言う。
「お前さん!名を聞いてなかったな!名はなんて言うんだ?」
わかさぎ姫は質問に答える。「…わかさぎ…姫」
「わかさぎ姫ェ?どっかの姫さんなんか?…まぁいいや、わかさぎちゃんよ~俺と結婚してくれねえか?」
「…え?」結婚…というワードは彼女にとってはあまり聞き慣れない言葉であった。しかし前に彼女の友達__今泉影狼の言葉を思い出した。人と人は両者に好意を抱き始めると恋愛しあい最終的に結婚をし永久な愛を結ばれるものだ…と。しかしそれではまだ早いのでは?私と彼はまだ出会って間もないのだ…。
「ははっ!やっぱ戸惑うか!いや、これにも理由があってだな~。わし残り4日で二十歳迎えるんじゃよ。」
彼は二十歳と言及しているがどう見ても二十歳の顔立ちではなかった。どちらかというと…三十代?彼は円状に歩き回りながら話は続く。
「わしの住んでいるこの村では行事が盛んでなぁ~その行事の中には誕生日の者を祝福する通過儀礼があって、その儀礼は二十歳を過ぎ、早期結婚するものには賞金を与えるという儀式なんだ。わしの家庭は余りにも貧相で…今にも米も尽きそうなんだ…。」
「は、はぁ…」わかさぎ姫は彼の家庭事情やこの村の詳細を聞きながらもまだ話を聞き続ける。
「そこでだ!この4日!4日でいい!わしと結婚するという事にしてくれねえか!わしは資金がほしい!金が欲しいんだ!フリでいい!頼む!わしの為に」
…彼はどうやら金が欲しいようだ。それで私と結婚するフリをしたいそうだ。しかし私は、普通はこんなの言語道断、断る。そうに決まっている。けど…
「…わかった。」
今の私には目的がある。
「…但し!条件付き!私は探している人がいるの!その人を一緒に探してくれない?」
男は少し沈黙し、そして
「うーん何のことだかわからないが…いいだろう!」
…そういえばまだ男の名前を聞くのを忘れていた。
「…そういえばあなたの名前は?」
「あーそうだったそうだった、まだ名前言い忘れてたなー。わしの名前は「健太」。「蝗野 健太」。」
健太…
!!!!
…今私は何故か懐かしい響きを聞いた気がした…それがなぜだかわからなかった。
「どうかしたか?」
「…いやなんでもない」
彼は私の顔を堅めた表情を心配そうに言っていたが私は笑顔で返した。
「じゃあまずは畑仕事手伝ってくれ!お前、なんでも手伝いしたいんだろ?やらせてやるよ。」
あっ...そうだった...そんな事を口走ってしまった。けど、言ってしまったからには仕方ない。彼に着いて行く事にした。
こうして私と健太、この2人はお互いの理由の為に共に生きていくことにしていった…。しかしこれがあんな事になるなんて…私はまだ気がつかなかった。いや、それもまた「運命」だったのかもしれない…
 
続く。